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令和5年の税制改正は「生前贈与は7年」が相続税の対象となる?!

今回は表題の税制改正について解説をさせていただきたいと思います。令和4年(2022年)12月16日に自民党から公表されました『令和5年度(2023年度)税制改正大綱』は下記の通りとなります。詳細は割愛しますが、下記内容の改正事項が記載されています。

<自民党HP 令和5年度(2023年度)税制改正大綱(PDFデータ)>

<令和5年度(2023年度)税制改正大綱の記載事項>
〇個人所得課税
・NISAの抜本的拡充・恒久化
・特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例(スタートアップ支援)の創設
・エンジェル税制の拡充及び要件緩和
・ストックオプション税制の拡充
・極めて高い水準の所得に対する負担の適正化

〇資産課税
・相続時精算課税制度の見直し(贈与税・相続税)
・相続税の計算上加算する生前贈与の期間延長
・教育資金の一括贈与の非課税措置の見直し(課税強化し3年延長)
・結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の見直し(課税強化し2年延長)
・医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長・緩和

〇法人課税
・暗号資産の期末時価評価等の課税に係る見直し
・オープンイノベーション促進税制の拡充及び要件の見直し
・研究開発税制の見直し
・デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の見直し及び延長
・スピンオフの実施の円滑化のための税制措置の拡充
・株式交付制度における所得計算の特例の見直し
・中小企業者等に対する軽減税率の延長
・<設備投資減税>中小企業向け設備投資促進税制の見直し及び延長
・<設備投資減税>先端設備等導入計画に基づく固定資産税減免制度の見直し
・地域未来投資促進税制の拡充・延長(所得税・法人税)
・特定資産の買換えに係る期限延長と一部見直し

〇国際課税
・外国子会社合算税制の見直し
・各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の創設

〇消費課税
・適格請求書等保存方式(インボイス制度)に係る見直し
・適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
・中小事業者の少額取引に係る事務負担の軽減措置
・返還インボイスの交付義務の見直し
・適格請求書発行事業者登録制度の見直し

〇納税環境整備等
・電子帳簿等保存制度の見直し
・防衛費の財源確保のための税制措置

■ 相続税の対象とする期間を現行の死亡前3年から7年へと延長する方向!

その改正大綱の中に不動産関連情報として、自民党は相続・贈与制度を見直す方針を固めました。生きている間に子や孫に財産を移す生前贈与のうち、相続財産に加えて相続税の対象とする期間を現行の死亡前3年から7年へと延長する方向で最終調整していくようです。生前の早い段階での贈与を促し、若い世代が結婚や子育てなどで資金を必要としているときに円滑に資産が移りやすいようにします。加算期間が延長されたということは相続財産が増加するということなので納税者にとっては不利になる増税の改正です。ちなみに、

生前贈与には毎年課税する暦年課税と相続時にまとめて課税する精算課税の2つがあります。現行の暦年課税は死亡前の3年間に贈与した分はさかのぼって相続財産に加算しています。見直し後はさかのぼる期間を7年へと延長したうえで、延長した4年間に受けた贈与は総額100万円までは相続財産に加算しないといった、大きな変化が無いような感じを受けますが、多少の増税は避けて通れません。

日本では1950年代に3年という期間が設定されました。海外では英国で7年、米国では一生にわたって相続財産として課税するといった国もあります。期間が長いほど資産を移転する時期に影響を与えにくく、中立的とされています。それも子や孫が資金を必要としている時に円滑に生前贈与が進むと考えられています。

■ 精算課税贈与を活用する人が少なかった一つの要因が解消される?!

今回の税制改正大綱では精算課税も見直す事が記載されています。現行では累積2500万円の控除枠を設け、超えた部分に一律20%を課すようなルールになっています。適用を受けるにはまず税務署に届け出て、数万円などの少額でも贈与を受ければ申告する必要が生じ、利用が低迷していました。現行の制度ではこの制度を選択すると少額の贈与についても毎年贈与税の申告をする必要がありますので、この辺の使い勝手が悪かったことも精算課税贈与を活用する人が少なかった一つの要因です。政府・与党は年110万円まで申告不要にし、非課税にすることで制度の使い勝手を高め、利用を後押しする事を発表しております。この使い勝手の悪さを解消すべく、今回の税制改正大綱に記載されました。

■ 暦年贈与より精算課税贈与のほうが相続税の節税効果は高い?!

今後はほとんどのケースで暦年贈与より精算課税贈与のほうが相続税の節税ができることとなります。生前贈与による相続対策をしている多くの人は贈与税の基礎控除以下である110万円以下の贈与です。このような年間110万円以下の少額贈与を継続するならば明らかに精算課税贈与の方が有利となりますので、暦年課税の年36万件に対し、精算課税は4万件がどこまで変化が出てくるかは、今後の動向に注目していきたいと思います。

ぜひ、今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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