不動産取引ガイド

誰でもわかる!木造住宅の耐震診断 ~接合部~

懲りずに誰でもわかるシリーズです。
今回のテーマは接合部です。

【前回までの記事】
第1回 誰でもわかる!木造住宅の耐震診断 ~必要耐力と保有耐力~
https://smile.re-agent.info/blog/?p=5067

第2回 誰でもわかる!木造住宅の耐震診断2 ~耐力壁~
https://smile.re-agent.info/blog/?p=5138
柱と土台、梁と梁、柱と梁が繋がる部分を接合部と呼びます。地震などの大きな力が加わると、接合部が抜けようとする力が作用するので、引抜けを防止するために構造金物で強度を高めます。

この接合部ですが、建築基準法で明確に規定されたのは、2000年6月です。それまでは釘その他金物で接合とだけ記載されていました。
今の耐震基準では、壁の強さに応じた引抜け力を計算し(N値計算と言います)、必要な金物を施工しますが、2000年6月より前の建物は明確な規定がなかったため、適切な金物が使用されていないケースが見られます。
※余談ですが、阪神淡路大震災以降、壁だけは強くする(筋交いを多用するなど)傾向がありますので、築年数が新しい物件ほど接合部の引き抜けが起きやすい状況と言えます。

耐震診断では、各壁の強さに対して、接合部仕様の低減係数を反映させます。
強い壁ほど、適切な接合部でなければ、強さを低く評価する、という考え方です。(基礎の仕様によっても変わりますが、ここでは割愛します。)
例えば2階建ての1階部分の場合で、接合仕様がⅣ(釘などで金物が使用されていない)の場合、壁基準耐力が2.0kN/m(強い壁)の場合は低減係数は1.0なので、そのままの強さが評価されますが、壁基準耐力が7.0kN/m(弱い壁)の場合は低減係数が0.6なので、60%しか評価されないことになります。

式で書くと下記になります。
Pw=Σ(C×L×f)
※Pw<壁の耐力>=Σ<合計>(C<壁強さ倍率※>×L<長さ>×f<接合部の低減係数>)
つまり、各壁の仕様から強さを算出し、接合部の仕様によって低減した数値を全部合計したものがその家の壁の耐力となります。
※壁強さ倍率については、「誰でもわかる!木造住宅の耐震診断2 ~耐力壁~ 」をご覧ください。

下表は耐震診断における接合仕様の低減係数表です。

平屋や最上階など、上に重さがかからない箇所の低減係数が低めに設定されているのがわかります。

実際の補強の現場で、接合金物だけを施工することはあまりなく、通常は壁補強とセットで接合部補強を行います。
あまり強い壁を設置しようとすると、それだけ強い引抜け力が生じてしまい、基礎も含めた改修工事が必要となる場合があるため、全体のバランスを見て補強方法を検討します。
※接合部だけ変えたとしても机上論では数値が改善したように見えますが、耐震改修工事は壁補強工事が基本となります。

リニュアル仲介の稲瀬でした。

***************************************************

■不動産の資産価値を即座に判断

セルフインスペクションアプリ「SelFin」

https://self-in.com/ (ご利用は無料です)

**************************************************

最近流行りのVR・AR・MRの違いをご存知ですか?!前のページ

『定期借地権付きマンション』の資産価値は?次のページ

ピックアップ記事

  1. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  2. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?
  3. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  4. 土地価格の相場を知る方法
  5. 住宅購入と 生涯の資金計画

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    令和5年度住宅取得者向け住宅ローン減税申告ガイド

    令和5年度に住宅を取得されたお客様への住宅ローン減税申告に関するご案内…

  2. 不動産取引ガイド

    資産価値に直結!総務省 人口移動報告が発表されました。

    総務省から、2018年1月29日、住民基本台帳に基づく2017年の人口…

  3. かし保険

    改正宅建業法施行は「既存住宅売買瑕疵保険」の普及が目的?!

    個人間売買取引で中古住宅を購入する際(現状有姿の場合は特に)、隠れた欠…

  4. 不動産取引ガイド

    耐震改修工事の補助金が使えない時期がある?!

    多くの自治体で耐震診断・耐震改修工事に対する補助制度が設けられています…

  5. 不動産取引ガイド

    2019 年10月度の不動産相場

    公益財団法人東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)から、2019…

  6. 不動産取引ガイド

    耐震改修の補助制度を利用する場合の注意点

    中古戸建住宅の購入を検討する場合、耐震診断などのインスペクションやそれ…

  1. 不動産取引ガイド

    家建てロボット登場。4~6週間の工程が2日に短縮!
  2. 不動産取引ガイド

    危険な場所は、地形図で見分ける!
  3. 不動産取引ガイド

    戸建てリノベ物件を安心して購入するコツ
  4. 不動産取引ガイド

    資産価値の下がりづらい土地を購入するための5つのポイント
  5. 不動産取引ガイド

    2019 年12月度の不動産相場
PAGE TOP