不動産取引ガイド

私道として利用される宅地の相続税評価について

 

個人が所有している宅地の一部が私道として利用されている場合や、セットバックを要する場合における、宅地の相続税評価についてお話しします。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

1.私道として利用される宅地の相続税評価について

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

私道には、公道と公道に接続し不特定多数の者の通行の用に供するもの(いわゆる「通り抜け私道」※下記A)と、専ら特定の者の通行の用に供するもの(いわゆる「行き止まり私道」※下記B)とがあります。相続税の計算上、これら私道の評価については、国税庁の通達により次のように規定されています。

 

(A)通り抜け私道の評価

通り抜け私道については、一般に次の①から③のような利用制限があります。

①道路として利用されることになり、第三者が通行することを容認しなければならないこと。

②道路内建築の制限により、通行を妨害する行為が禁止されること。

③私道の廃止または変更が制限されること。

 

このような利用制限がある私道は、私有物として自由な処分ができるものではなく、その私道を含む宅地の売買実例においては、私道部分の評価額を100%減額している事例が多いようです。このため相続税の計算上も、通り抜け私道については評価をしないこととされています。

 

 

 

(B)行き止まり私道の評価

行き止まり私道については、その使用収益にある程度の制約はあるものの、私有物として所有者の意思に基づく処分の可能性は残されています。特に、行き止まり私道と、私道に隣接する土地が同一の所有者となった場合には、私道はその敷地内に取り込まれ、私道ではなくなる可能性があります。

このため相続税の計算上、行き止まり私道については、相続税評価額の30%相当額により評価されます。

なお、行き止まり私道のうち、その私道を通行して不特定多数の者が地域等の集会所、地域センターおよび公園などの公共施設や商店街等に出入りしているものについては、前述(A)の通り抜け私道と同様に、相続税の計算上、評価をしないこととされています。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2.セットバックを要する宅地の評価
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●セットバックを要する宅地とは
建築基準法第42 条第2 項の規定により指定を受けた道路(いわゆる「2項道路」)に面する宅地は、原則、その道路の中心線から左右に2mずつ後退した線が道路の境界線とみなされます。このため将来建物の建替え等を行う場合には、その境界線まで後退(セットバック)して道路敷きとして提供しなければならないことになっています。
(※前回の「敷地のセットバックとは?(基礎編)」も併せてご参照下さい。)

●セットバックを必要とする宅地の評価
セットバックを要する宅地については、現在の利用に支障がない場合でも、将来セットバックして道路敷きとして提供せざるをえなくなるおそれがあります。
このため、相続税の計算上、その評価額はセットバックを必要としない宅地の評価額に比べて減額すべきと考えられます。

この場合、セットバックを必要とする部分の評価額は、私道と比べると、セットバックをしていない限り宅地として利用されることから、前述1.(B)の行き止まり私道の評価額を下回ることはないと考えられます。そこで国税庁の通達では、セットバックを要する部分については通常の評価額の3 割評価(7 割相当額を控除)とし、その宅地についてセットバックが要しないものとした場合の評価額から、次の算式により計算した金額を控除して評価することとされています。

(算式)セットバックが要しないものとした場合の宅地の評価額×セットバックを要する部分の地積÷セットバックを要する宅地の全体の地積× 0.7

●セットバック終了後のセットバック部分の評価
セットバック終了後のセットバック部分は、所有権を有している場合でも建築基準法上の道路であり、建物等を建築することはできないことから、私道として評価することになります。したがって、相続税の計算上は、前述1.(B)の行き止まり私道に該当するものとして、私道でないものとして計算した評価額の30%相当額で評価されます。

ただし、セットバック部分を含めた道路が不特定多数の通行の用に供されている場合には、前述1. (A)と同様に、評価をしないこととされています。

 

今から住宅を購入する際には、ここまで考慮する必要がありませんが、ご自宅やご実家などが大きな土地でこのような私道に面していた場合、将来の相続税・贈与税などを算出する際、少し影響が出る可能性があります。以上、エージェント中田よりちょっとした豆知識でした。

※参考URL(国税庁 私道の評価)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/hyoka/4622.htm

***************************************************

■不動産の資産価値を即座に判断

セルフインスペクションアプリ「SelFin」

https://self-in.com/ (ご利用は無料です)

 

■資産となる家を真剣に考えるセミナー

http://www.rchukai.com/#!seminar/c1vy0

***************************************************

 

中古住宅・マンション購入後の資産価値の下がり方とは?!(前編)前のページ

マンションの敷地権とは?次のページ

ピックアップ記事

  1. 立地適正化計画をご存知ですか?
  2. 土地価格の相場を知る方法
  3. 住宅購入は不安でいっぱい
  4. 住宅購入と 生涯の資金計画
  5. 危険な場所は 地形図で見分ける

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    住宅ローン|銀行、保証会社、不動産業者の関係

    銀行ローンの折衝というのは、微妙で複雑な関係の中で行われます。直接…

  2. 不動産取引ガイド

    不動産取得税の注意点

    住宅を購入し新しい生活に慣れてきたころに突然送られて来るのが不動産取得…

  3. 不動産取引ガイド

    未来の水害への備えを

    去年の台風19号(令和元年東日本台風)や昨今の熊本県球磨川の氾濫等水害…

  4. 不動産取引ガイド

    減少するリアル店舗 「商業施設に近い」というPR文に資産価値を落とす要素が・・・

    2016年10月16日夕刊フジの記事で、「個人商店が成り立たなくなって…

  5. 不動産取引ガイド

    メリット大!安心・快適に住める「長期優良住宅」

    長期優良住宅の制度が始まり、早10年が経過しようとしています。…

  6. 不動産取引ガイド

    家を購入したけど、失敗してしまいました!?

    家を購入したけど、失敗してしまいました。なんて事を最近よく耳にします。…

  1. 不動産取引ガイド

    9月は火災災害について考えませんか?
  2. 不動産取引ガイド

    博多駅前2丁目交差点付近の道路陥没事故から学ぶ?!インスペクションの重要性!
  3. 不動産取引ガイド

    知らないと損をする?!相続税計算のありがちなミス!
  4. お金

    “勘定合って銭足らず”調整不足で建築中に資金ショートの事態も!
  5. 不動産取引ガイド

    道なのに道路ではない⁉
PAGE TOP