不動産取引ガイド

売買契約時の売主側の注意事項

不動産を売却する理由についてはいくつかのパターンがあります。
転勤、住み替え、離婚など色々ありますが、最近は、「高齢になり施設へ入居するため」というケースもちらほらあります。

そんな場合に注意したいのは、売主様の意思能力(=判断能力)についてです。

意思能力と聞くと、「契約をしているのだから意志があるに決まっているだろ」と思う方も多いと思います。
ちなみに、法律では『意思能力のない人がした契約は無効』となります。

では、意思能力がないとはどういう事かというと、
例えば、認知症にかかってしまい、正常な判断能力を失ってしまっている場合、その方とは契約を結ぶことはできません。

いくら契約書に署名捺印をしたとしても、契約自体が無効となってしまうことがあります。

良くあるケースでは、ご本人が認知症を患っており、息子さんが代理人となり売買契約を締結したが、後から娘さんが契約の無効を主張して裁判を起こした、という事例もあります。

契約当時のかかりつけ医の診断書を証拠として提出されてしまえば、裁判所にも本人の判断能力に問題があったことは明白ですし、契約自体が無効と認められてしまうことになるでしょう。

もし不動産所有者が判断能力のない状態になってしまっていれば、そのままでは売買契約を結ぶことはできません。

この場合は、家庭裁判所に本人に代わって契約を結ぶことができる代理人「成年後見人」を選任してもらう必要があります。

さらに、売却する不動産がもともと住んでいた家の場合には、「居住用不動産の売却許可」も取得する必要もあります。

これらの手続きを全て行うとなると、準備から申立、後見人選任、売却許可まで早くても3~4か月かかります。
ケースによっては半年以上かかることもあります。

通常はここまでの準備が進んだうえでの売り出しになっているはずですので、買主側で気にすることではありませんが、売買契約時に売主の会話がスムーズにいかない、代理人が出てきているがその理由が明らかでないようなケースには注意が必要かもしれません。

契約後にスケジュールが変わってしまうと、住居物件の場合は引越しのスケジュールや、お子様がいらっしゃるご家庭でしたら学校の転入などにも影響が出てくるかと思います。
よりトラブルもなくスムーズに完了するには、売主様がどういう方なのかという事も事前に把握しておいた方が良いと思います。
エージェントと共に、事前の確認をしていただき、より安心安全な不動産取引をしていただけたらと思います。

高齢となった親の住居を考える?!老人ホームの入居と税金について前のページ

ペロブスカイト太陽電池とは?次のページ

ピックアップ記事

  1. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  2. 土地価格の相場を知る方法
  3. 住宅購入は不安でいっぱい
  4. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?
  5. 危険な場所は 地形図で見分ける

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    相続税対策と建物の合体の登記

    今回は、すでにお住まいをお持ちの方向けの、相続税対策についての事例紹介…

  2. 不動産取引ガイド

    スーパーランキング!

    生活環境が良い事も住宅選びの条件だと思います。特に、スーパーが近い…

  3. 不動産取引ガイド

    相続放棄手順をご存知ですか?

    相続放棄に踏み切る人は増えています。司法統計によると、2021年の受理…

  4. マンション

    入居者・購入者に負担転嫁?!管理組合向けのマンション保険料の引き上げが続いています。

    損害保険各社はマンション管理組合が共用部分の損害に備えて加入する保険の…

  5. 不動産取引ガイド

    空き家を「準公営住宅」として活用していく?!家賃を補助し、子育て世帯支援を実施?!

    1月16日(土) 日本経済新聞の朝刊のトップに表題の記事が出ていました…

  6. 不動産取引ガイド

    マンションの敷地の権利~定期借地の場合~

    マンション購入の場合に注意すべきポイントにはいくつかありますが、そのう…

  1. 不動産取引ガイド

    不動産もソーシャル・ディスタンス
  2. 不動産取引ガイド

    注文住宅で予算オーバーする原因
  3. 不動産取引ガイド

    中古住宅を購入してリフォームをされる方、必見?!住宅リフォームガイドブック(令和…
  4. 不動産取引ガイド

    水災害に強い街づくり -都市再生特別措置法の改正-
  5. 不動産取引ガイド

    【住宅ローン減税1】不動産会社選びが重要です!
PAGE TOP