不動産取引ガイド

2024年1月から適用される?!「マンション節税」について

相続税を低く抑える「マンション節税」を封じるため、税の算定ルールが変わる見通しとなっています。新ルールの数字や計算は複雑怪奇。背景には近年のマンション市場の激しい動きがある。新ルールは国税庁が8月下旬に意見公募を終え、2024年1月から適用される見通しとなっています。親族からマンションを相続した方のケースで、なぜマンションだけがルール改正になるのかが気になっている方もいるようです。調べてみると、共同住宅特有の事情が関係しているという事です。

相続税の計算では従来、住宅は土地と建物の価値を分けて考えていました。通常マンションは多くの人が共有し、土地の持ち分は戸建てより小さい事が多いです。建物も実際には高層階などの市場価格は高いのに、相続税の評価は階数で差がありませんでした。結果的にマンションは市場価格よりも相続税の評価額が低くなりやすいという点で相続税も抑えられたり課税されなかったりする可能性が高くなっていました。その為、今回の改正ポイントとなっています。

■なぜ、「マンション節税」のルール改正が行われるのか?

そもそもなぜ、「マンション節税」のルール改正が行われるのか。その理由は、評価額とマンション市場価格の乖離(かいり)が見過ごせないほど大きくなったことが背景にあります。実際、国税庁の調査でもマンションの約65%は評価額が市場価格の半額以下で、戸建てよりはるかに差が大きくありました。国土交通省の不動産価格指数をみると、10年平均と比べた上昇率は足元で戸建ては20%弱ですが、マンションは約90%に達しています。実際に購入を検討されている方は、マンション価格が以上に上がっている事にお気づきだと思います。その為、これほど差があるので、マンションだけが改正でも仕方ないかもしれないが、そもそもなぜこんなに値上がりしているのかをご説明したいと思います。

多くの住宅購入者がいる中で誰でも「便利な場所に住みたい」と考えると思います。そのようなケースですと現在、不動産価格も高騰している為、事実上マンションしか選択肢がないと判断される方も多いです。都心の駅前などに戸建ては簡単に建てられませんが、再開発などの流れからマンション供給は目立っています。交通の便利さに加え、こうした場所は商業集積が進む例も多くあります。周辺環境が整えば、将来マンションを売るときの価値も落ちにくいという好循環が生まれます。

実需を支えに価格が上がると、再び相続税関連の問題が浮上してきます。通常、実需で価格上昇が起こると相続税評価額との差が開きます。そこに着眼して節税などの目的で買う人も増える為、需要が高まります。結果、不動産価格が高騰するという循環が生まれてきます。

■今回の「マンション節税」の改正は、3つの要素に分解できる!

ルール改正の背景はご理解いただけたかと思いますが、新しい計算式は何を意味するのでしょうか?改めて分析すると、この式は大きく3つの要素に分解できます。

1つ目は築年数です。計算式では築年数がたつと、その分だけマイナス係数がかけられ、評価が低くなります。一般的にマンションは古くなれば市場価格が低下することを反映した形となります。2つ目は階数です。マンション全体の階数と自室がある階数、それぞれが高くなるとプラスの係数がかかり、評価が上がります。これも通常、高層マンションは市場で人気を集めやすいことを反映している結果と言えます。

最後の3つ目は面積です。複数の住戸で構成されるマンションでは通常、1戸あたりの敷地持ち分が小さくなる事が多いです。都心などではマンションの自室面積も小さくなりがちであり、高層物件などでは広いケースもあります。市場価格は一般に広い面積の方が高く、計算式では敷地の持ち分と自室面積のバランスをみて調整します。

一連の計算結果が1.67を超えると、従来の相続税評価額に計算結果と0.6の定数をかけて新しい評価額とする事になります。ちなみに、ルール改正後に評価が常に上がるとは限りません。従来と同じか、評価が下がる場合も出てきます。

■今回の「マンション節税」の改正の結果、評価が下がる物件も発生します。

複数のマンションを例に新ルールで試算したところ、やはり評価額は上がる例が多く、おおむね従来に比べ1.5〜2倍になる例が多いようです。しかし、築年数の経過したマンションの場合、規模等によっては評価額が下がるケースもあるようです。

ルールが改正された際には納税者が簡易に評価額を知ることができる計算機のようなツールを国が用意する予定となっています。マンション所有者や購入予定者は試しに計算してみると、自らの資産価値を考えるヒントになるかもしれません。

いずれにせよ、来年からいよいよ「マンション節税」の制限が大きく動くようになりそうです。不動産を購入しようと思われている方、既に所有されている方は、このような動きを把握しておいて欲しいと思います。

今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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