不動産取引ガイド

インスペクションに関するボタンの掛け違い その1

改正宅建業法による既存住宅状況調査がスタートして半年以上経過します。
他の宅建業者から「インスペクション」というワードがちらほらと聞こえてくるようになりました。
既存住宅状況調査が市場に浸透するのは喜ばしいことなのですが、同時に壮大なボタンの掛け違えを誘発しているような気がしてなりません。

<勘違いが発生するポイント>

・既存住宅状況調査は任意の制度です。(既存住宅売買瑕疵保険も任意の制度です)
・既存住宅状況調査には調査対象範囲があります。
・既存住宅状況調査は現状を判断するものであって、将来的に不具合が生じないことを保証するものではありません。
・検査をすれば既存住宅売買瑕疵保険に加入できるのではなく、検査基準に合格する必要があります。

それぞれのポイントについては数回に分けてご説明いたします。

問題なのは、いざ瑕疵の事故が発生した時に、実はリスクがヘッジできていなかったことが明らかになるケースです。

例えば1年後にシロアリ被害が発覚したとします。
既存住宅売買瑕疵保険ではシロアリは免責となります。
不動産売買契約でシロアリ被害を瑕疵とする取り決めがあったとしても、発覚が遅れれば、売主へ責任を追及できる期間を過ぎてしまう可能性が高いです。
(そもそもシロアリがいつ発生したかの特定は困難です)

例えば1年後にキッチンの水栓が原因の漏水が発覚したとします。
既存住宅売買瑕疵保険では住宅設備は保険対象外です。
原則として現況有姿での取引となるため、ある程度期間を定めて売主が責任を負うとする契約もありますが、補修費用を負担せざるを得ない状況になる可能性が高いです。

中古住宅は後から次々と不具合が出て、結局補修費用を考えると新築がよかった、というのはかつてよく言われた新築営業トークですが、せっかくのインスペクションも、得られる情報の取り扱い方を間違うと、あんまり意味のない行為となってしまいます。

中古住宅購入時に必要な概念は「維持・保全(あとどれくらい使えるか、どのようなメンテナンスが必要か)」です。
耐用年数が経過した部位・設備は、購入時にリフォームしないと、いつまで使えるかわからない状態となります。
インスペクションを実施したからといって耐用年数が伸びるわけではありません。瑕疵保険や設備保証などの制度も、正常利用時の異常に対するヘッジであって、経年による正常な劣化をヘッジするものではないのです。

インスペクションにはリフォームが深く関係します。
※リフォームを実施するタイミングを検討するためにインスペクションがある、といっても過言ではありません。

リフォームが必要なら新築を買った方が良かったという人は、戸建てを買うべきではありません。新築でもメンテナンスが必要で、住宅設備はローン返済期間中ノーメンテナンスで過ごせるほど長持ちではないからです。

今回から数回、勘違いが発生するポイントについて解説いたします。
特に戸建て住宅をご検討の方は欠かせない考え方になるので、ぜひ参考にしてください。

リニュアル仲介の稲瀬でした。

ペットと暮らす家前のページ

賃貸という手もありますよ!?次のページ

ピックアップ記事

  1. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  2. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?
  3. 住宅購入は不安でいっぱい
  4. 危険な場所は 地形図で見分ける
  5. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    「建物のオバケ」が見つかった?

    本当はそこには存在しないのに、土地のうえに何かある!?今回は、…

  2. 不動産取引ガイド

    長寿化する人生で家は資産として活用する時代へ

    人生100年時代(長寿化)においては、人生は学び直しや働き方の転換を繰…

  3. 不動産取引ガイド

    土地の引渡しにおける注意点

    購入する不動産が無事に決まった場合、最終的な手続きが物件の引渡しです。…

  4. 不動産取引ガイド

    親からの住宅資金援助 贈与税はかかるのか?

    住宅を購入する際に、親からの資金援助を受けて購入されるお客様が増えてい…

  5. 不動産取引ガイド

    土地には2種類の「境界」がある!?

    一般に,土地を区切る境目のことを「境界」とか「境界線」などといいます。…

  6. 不動産取引ガイド

    住宅購入のためのツール

    住宅購入を検討されている段階で間取りや物件詳細をご覧いただくと思います…

  1. 不動産取引ガイド

    家の中に小屋が作れるって知っていますか?
  2. 不動産取引ガイド

    約30年でこれだけ変わった!地域別人口増加率。
  3. 不動産取引ガイド

    所有者不明土地が減ると取引出来る不動産が増える?!
  4. 不動産取引ガイド

    二回目のマイホームを購入を考える時期
  5. 不動産取引ガイド

    フラット35でペアローンが利用できるようになりました
PAGE TOP