不動産取引ガイド

うちの実家はこの先どうなるの?

ゴールデンウィークに帰省された方も多いと思います。
少し傷んだ家を眺めて「やっぱり実家は落ち着くなぁ」なんて思った方も多いのでは?

皆さんは「実家」の将来について考えたことはありますか?
物事には必ず終わりがあります。
その時がいつなのかがわからないだけで、その終わりは将来必ず(多くの場合は突然に)訪れるのです。

傷み始めた実家や年老いていく親を見ても、今はまだまだ元気だからと問題を先延ばしにしてしまいますが、実家の終わりについては親が元気なうちに話しておかないといけない課題です。

親が家に対する選択肢は3つです。
「住み続ける」「貸す」「売る」です。
(多くの方が「住む」を選択すると思いますが、「住むためのコスト」を考慮していないケースが多いと思います。)

そして、実家の終わりも3つです。
「住み継ぐ」「貸す」「売る」です。

かつての住宅すごろくでは「住み継ぐ」が想定されていましたが、現在の子供世代はすでに家を持っています。
単純に実家に帰るとは言いにくいのが実情です。
つまり、子供世代は「貸す」「売る」を実行する役割になります。

住み続けたい親と実家の資産化を実行しなければならない子供世代。
まずはここのギャップを埋める努力が必要です。
子供からいきなり「お父さん、この家どうするの?」と言われたら、親もびっくりしてしまいます。
だからといって放置したままだと相続が発生するまで実家は放置されたままになります。

少し具体的な話をします。
一般的に男性の方が先に亡くなります。
亡くなるまでに介護の問題が発生します。
お父さんの具合が悪くなったからといってお母さんはいきなり施設に入れたりできません。
ギリギリまで介護を頑張ってしまいます。
やがてお父さんが亡くなります。
(ここで相続が発生します。もし実家が都市部にある場合は相続税が発生するのですが、その話はまた別の機会に)

そうこうしているうちにお母さんの具合も悪くなります。
お母さんは自分が介護で苦労したので、子供の世話になるより施設に入ることを希望します。
(ここで介護に関する費用が発生するのですがそれも別の機会に)

いよいよお母さんも亡くなり、実家が子供に相続されます。

さて、実家はどうなるのでしょうか。
「住み継ぐ?」「貸す?」「売る?」

ここまでくると選択肢は「売る」しかなくなります。

「住み継ぐ」=両親の介護を行うことです。
仕事と家の問題で現実的ではありません。

貸すためにはリフォームが必要です。
また、相続の問題もあります。

「貸す」という選択肢も現実的ではなく、仕方なく駅前の不動産屋に駆け込んで、二束三文で売らざるを得ない…。
思い出の詰まった実家はあっけなく取り壊されてしまうのです。
これが現金資産を多く保有しない、一般家庭のありふれた終わりの姿です。
(人口減のこれからの時代では売りたくても売れないという結末もありますが、これも別の機会に)

得られる教訓は一つです。
親が60歳を超えたら、実家についてお金の話をしましょう。

人間は年を取ると判断力も鈍ります。
元気なうちに「実家の終わり」を親に決めてもらう必要があります。

住み続けるのにいくら必要なのか?
建築士による建物調査を実施すれば算定できます。

貸すとしたらいくらで貸せるのか?
そもそも借り手がつく立地なのでしょうか。

売るとしたらいくらで売れるのか?
人口減のこの社会で将来に渡って買い手がつく立地なのでしょうか。

家にまつわるお金を一つずつ明らかにすれば、最悪な終わりを回避する方法が見えてきます。
「実家の終わり」の話は生々しいので避けたくなりますが、時間をかけたところで結末にはあまり違いはありません。
むしろ時間をかければかけるほど選択肢が狭めてしまいます。
また、親が認知症になり実家を売れなくなる前に、家族信託で実家の管理権限を子に移しておくという方法があります。
家族信託について詳しく知りたい方はこちらも参考にしてみてください。

□家族信託のおやとこ
https://trinity-tech.co.jp/oyatoko/column/1/

次の長期休暇はお盆でしょうか。
先祖に想いを馳せるとともに、ご両親と「実家の終わり」について話をするのはいかがでしょうか。

リニュアル仲介の稲瀬でした。

金融機関によって こんなに借入可能額が違う!?前のページ

MRで建築前のマンションの細部も見られるようになるかもしれません。次のページ

ピックアップ記事

  1. 住宅購入と 生涯の資金計画
  2. 住宅購入は不安でいっぱい
  3. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  4. 土地価格の相場を知る方法
  5. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    家の買い替えする場合のポイント③売却時にかかる譲渡所得税について

    不動産を、購入した価格より高い価格で売却した時は、その売却益に税金がか…

  2. 不動産取引ガイド

    不動産取引においての〇〇権とは…

    お住まい購入の売買契約の前には、そのお住まいについての重要事項説明があ…

  3. 不動産取引ガイド

    後悔しない内装にするためには⁉

    住宅の内装は、部屋の印象を左右する大切なものです。家具やインテリア…

  4. 不動産取引ガイド

    不動産の4つの価格 その3 「路線価」

    前回は、不動産の4つの価格のうち、「固定資産税評価…

  5. 不動産取引ガイド

    やっぱりマンション購入は都心で検討した方が良い?!

    中古マンションを売買する際の目安になるリセールバリュー(再販価値)で、…

  6. 不動産取引ガイド

    中古住宅の取引は「仲介会社選び」が最も重要です

    物件は一つしかないので、結局のところ、どの不動産仲介会社を通じても、購…

  1. 不動産取引ガイド

    相続後の住居どうするべきか、配偶者居住権を活用する?!
  2. 不動産取引ガイド

    登記の住所変更をお忘れなく
  3. 不動産取引ガイド

    まだまだ減らない「おとり広告」
  4. 不動産取引ガイド

    不動産営業マンを味方につけよう!
  5. お金・ローン・税金

    見飽きたテーマ「賃貸VS持ち家の『損益分岐点』」
PAGE TOP