不動産取引ガイド

東京都 旧耐震建築建替え促進!市場への影響は?

先日の日経新聞一面に、東京都が分譲マンションの建て替えを促進するために容積率を緩和する方針を打ち出したとの記事が掲載されてました。

これは、現在旧耐震マンションにお住まいの方にとっては老朽化したマンションの建替えという選択肢が増える可能性があり、朗報です。

では、今から住宅購入を検討している方にはどのように捉えればよいのでしょうか・・。

まず、都が「建替え促進」をする背景について

都内の分譲マンションの棟数は約53,2113棟、そのうちの22.3%(11,892棟)が旧耐震基準のマンションとなっており、中でも世田谷区、港区、渋谷区、新宿区、大田区など都心に多いことが分かります。

東日本大震災など大規模地震で老朽化した建物に大きな被害が出ていることから、国は旧耐震基準の建物の建て替えを促進してきました。しかし、分譲マンションは、区分所有者の合意形成が難しいため、「収益性が見込める立地の良い場所にしか不動産会社が事業に参加せず、なかなか進んでこなかった現実があります。

 

【合意形成が難しくなっている理由】

それは建替えもしくは再生に要する費用を負担できない「費用負担困難者」の存在です。旧耐震マンションともなると、所有者も高齢者が多く実質建替えしたくとも、費用負担ができないので建替えに賛成できないという問題です。

 

こうした問題を解決するために、東京都はマンションの建替え等促進を図るため容積率の緩和で都市開発を誘導する「総合設計制度」の運用をさらに見直し、新たな許可要綱を策定しました。(詳細内容は、下記「関連資料」参照)

この容積率を緩和することによって、余剰の床面積を増やし、建替え後の戸数を増やす。

その増加した戸数を分譲することによって

  1. 民間マンションディベロッパーが参加しやすくする
  2. 建築代金の所有者負担額を大幅に引き下げることができます。

つまり、この制度を利用して現在のマンションを建替える場合、容積率の割増等を利用して現在の規模よりも大きく、更に今の時代のニーズに適したマンションにグレードアップして建替えることが可能となり、古いマンションもぐっと価値が上がる可能性が出てきました。

では、「都内超都心(例えば、港区、千代田区、新宿区、渋谷区など)の旧耐震マンションを今のうちに購入しておけば、将来ばけるかもしれない・・・。」という事を考える方も多いかもしれませんが、注意が必要です。

【注意点】

全ての旧耐震マンションが容積率緩和を受けれるという話ではないので注意が必要です。「まず市や区が先行してまちづくり計画を定め、それに基づいて都が対象地区を指定。指定地区内の旧耐震マンションは、周辺の住宅などとの共同建て替えを条件に容積率の上限の緩和を受けられる。集約する敷地数などに応じて、割増容積率を算定する。」とあります。

詳しくはまだ決定していないので、確実なことは言えませんが、周辺の住宅などを巻き込んで共同建て替えする必要があるため、少なくとも幹線道路沿いの小さな土地に総戸数が20~30戸ぐらいの10階建てのマンションなどは実現性が低いといえそうです。

容積率が緩和されるといえどもマンションディベロッパーはうまみがないと参入してこないでしょうから、駅近で、ある程度の広大な敷地、周辺も住宅街を形成しているような「人口密度の割に容積率が低かったエリア」などがねらい目かもしれません。

但し、建て替えの話は何年もかかりますし、建替えが実現できるかどうかも組合による話し合いになるため、やはりどの立地に、どのぐらいの規模のマンションかによって実現性も変わってくるといえそうです。ですから値上がりを期待して購入するといっても、長期スパンで考えられる方でないとお勧めできません。

今後の動きに注目をしたいです。

バイヤーズエージェント 中田でした。

≪関連資料>

–【東京都マンション建替方容積率緩和の概要】————————————

1、適用区域について

従来:適用区域を限定

→ 緩和策:都内の市街化区域全域に拡大

2、公開空地の要件について

従来:歩道状空地・広場状空地が必須

→ 緩和策:歩道状空地が必須(広場状空地はなくても可)

従来:公開空地の最低限度は、容積率に応じて10%~30%

→ 緩和策:最低限度を一律10%に緩和

3、公開空地以外の容積割増評価の対象について

従来:福祉施設や防災施設等(防災備蓄倉庫等)を評価

→ 緩和策:地域貢献施設(津波避難ビル等)整備を追加し、メニューを拡充

4、隣接地の取り込みについて

従来:共同住宅建替誘導型では、不可

→ 緩和策:隣接地を取込むマンション建替えも可

但し、外壁面の後退、割増容積率の最高限度等については総合設計許可要綱と同様

(詳細は東京都ホームページ等参照)

容積率の割増

具体的には総合設計(建替え計画)の種類(型)によって異なるが、最低でも現行の建築基準法で定められている基準容積率の1.5倍以上(但し上限も有り)となる。

※詳細は、「東京都マンション建替法容積率許可要綱」/東京都市整備局/H29年3月

http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/mansion/pdf/yoko.pdf

 

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