不動産取引ガイド

「売主も知らない」告知事項に注意。一般的な書式では見落とされる可能性あり――マンション購入時に確認すべき『重要事項に係る質問書』とは?

マンションを購入するというのは、多くの方にとって一生に一度あるかないかの大きな買い物です。
購入後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためにも、事前にどれだけ正確な情報を集められるかが重要なポイントになります。
今回は、マンションを購入する際に“見落とされがちだけれど本来確認しておくべき重要なポイント”についてお話ししたいと思います。

そのキーワードとなるのが、「マンション管理会社への『重要事項に係わる質問書』」です。
この“管理会社への”という部分が特に重要で、一般的な取引書類だけでは知ることができない情報を得るために、とても有効な手段になります。

■マンションの売買における『重要事項に係わる調査報告書』について

まず一般的に、中古マンションの売買においては、契約前の重要事項説明においていくつかの書類が添付されるのが通例です。
そのうちのひとつが『付帯設備表・告知書』と呼ばれるもので、これは売主が知っている物件の状態や過去のトラブル等について、買主に伝えるための書類です。
たとえば、「天井から漏水があったことがある」「ガスコンロの一つが故障している」「周辺住戸との騒音トラブルがあった」といった情報が記載されます。

もう一つの書類が『重要事項に係わる調査報告書』です。
これは仲介会社がマンションの管理会社に依頼し、有料で発行される書類です。
この報告書には、管理費や修繕積立金の滞納状況、マンション全体としての修繕履歴や修繕計画の有無、積立金の残高や今後の値上げ予定、アスベストの調査有無などが記載されています。
つまり、マンション全体の『制度面や財務面』に関わる情報はこの報告書で確認できます。

しかし、ここでひとつ大きな問題があります。
それは、『重要事項に係わる調査報告書』には、マンション内で過去に起きた漏水事故や事件・事故、住民同士のトラブルといった『生活実態に関わる情報』は原則として記載されていないという点です。
そういった情報は売主が記入する『告知書』の範疇となっており、管理会社は基本的にその報告の責任を負いません。

では、売主がその情報を知らない場合はどうなるのでしょうか?

■買主にとって非常に重要な情報が、知らされないまま契約が進んでしまう?!

実はこのケース、意外と多くあります。
たとえば、売主が実際にはその物件に住んでおらず、過去に親族へ貸していた場合や、投資目的で所有していた場合、さらには購入後すぐに転勤や事情により短期間で売却をすることになった場合などです。
こうしたケースでは、売主自身が物件の詳細な状態や過去のトラブルを知らず、『知らないので記入しない』ということが現実的に起こります。
結果として、買主にとって非常に重要な情報が、知らされないまま契約が進んでしまうことになるのです。

ここで非常に有効となるのが、私たちリニュアル仲介が独自に作成した「管理会社への『重要事項に係わる質問書』」という書式です。
この書類は、通常の取引ではあまり使用されないものですが、マンションを実際に管理している管理会社に対して、過去に建物内で起こった漏水事故、事件・事故、住民間のトラブルといった『重要な実態情報』について質問するためのものです。

管理会社は日常的にマンション内の状況を把握しており、そうしたトラブルに関する情報も蓄積しています。
ただし、通常の報告書や調査書類の書式にはそういった項目が含まれておらず、仲介会社からの積極的な問い合わせがない限り、情報開示を行わないケースも少なくありません。
つまり、この質問書を用いることによって、通常では見過ごされてしまう可能性のあるリスクをあらかじめ洗い出し、買主にとってより安心・納得のいく取引を実現することができるのです。

■不動産事業者にも取り入れていただきたい独自の『重要事項に係わる調査報告書』

特に宅地建物取引業者(宅建業者)の方には、このような取り組みが業界内でまだ一般的ではないからこそ、ぜひ積極的に取り入れていただきたいと考えています。
買主の信頼を得る上でも、こうした一歩踏み込んだ対応は大きな価値となるはずです。

私たちリニュアル仲介は、「他社がやっていないからやらない」「面倒だから省略する」といった発想ではなく、「買主が本当に知っておくべき情報は何か」という視点に立ち、独自の手法で情報を積極的に収集・提供する『バイヤーズエージェント』として、皆様の住まい探しを全力でサポートいたします。

大切な不動産取引だからこそ、少しの手間を惜しまず、あとで後悔しないための情報収集にこだわります。ぜひ、今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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