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知らないと損をする?!相続税計算のありがちなミス!

ある日突然、相続が発生し、相続した家を売るか売らないかで兄弟間でトラブルが発生するという事はよくある事です。それも遺産が高額になればなるほどなおの事です。親や配偶者などから財産を相続するとき、気を付けておきたいのが相続税です。相続税額を知らずに財産を相続すると、思っていたよりも納税額が大きく、支払いに苦労してしまう可能性もあります。

相続税額の概算を調べる際は、相続税早見表の活用がおすすめです。いざというときに困らないよう、早見表から相続税の概算額を知り、必要であれば専門家に相談してスムーズに相続できるようにしておいていただければ幸いです。

■そもそも「相続税」とは相続財産を取得した際に支払う税金のこと

そもそも相続税は、どのようなときにかかる税金なのでしょうか。相続税とは何か、まずはその概要を把握する必要があります。亡くなった人つまり被相続人の財産を残された人が受け継ぐことを相続といい、相続財産を取得した際に支払う税金を相続税と呼びます。相続税の納税義務者は原則として個人に限定され、納税する額は相続した財産の金額に応じて変化します。ちなみに相続税の申告・納税先と期日は、以下のとおりです。

申告・納税先:被相続人の住所地を所轄する税務署
申告・納税の期日:相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月目の日まで
申告や納税が遅れてしまった場合、加算税や延滞税がかかってしまいます。財産を相続した場合は、必ず期日までに申告・納税するようにする必要があります。

■「相続税」の対象となる資産はどのようなものか?

〇相続税が掛かる財産:預貯金、株式、土地、建物、生命保険金、死亡退職金、相続時精算課税制度による贈与財産、生前贈与財産など

〇相続税が掛からない財産:墓地や墓石などの祭祀財産、生命保険、退職金のうち一定金額など

〇相続財産から控除できるもの:被相続人の債務、葬儀費用など

相続した財産すべてが相続税の対象となるわけではありません。非課税となる財産を除く相続財産から債務、葬儀費用などを引いたものが、相続税の対象となります。また、相続が発生した際に、必ず目にする相続財産の基礎控除については事前に知っておくと良いのかもしれません。例課税財産が把握できたら、課税財産から基礎控除を差し引き、課税遺産総額を算出します。

〇課税遺産総額=相続税の対象となる財産(課税財産)-基礎控除
〇基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人とは、民法に定められた相続人のこと。法定相続人には被相続人の配偶者や子ども、親、兄弟姉妹などが含まれており、被相続人に養子がいる場合は以下のルールに従い、養子も法定相続人の数に含まれます。

〇被相続人に実子がいる場合:養子は1人まで法定相続人の数に含まれるます
〇被相続人に実子がいない場合:養子は2人まで法定相続人の数に含まれるます

また、基礎控除額によって課税遺産総額がゼロになった場合、相続税を申告する必要はありません。上記計算式によって課税遺産総額がプラスであれば、税率を掛けての計算を行う必要があります。

相続税を算出するために、上記で算出した課税遺産総額を、法定相続分で按分します。法定相続分とは、民法で定められた各相続人の相続分のことで、おもな相続分は以下のとおりです。

〇相続人が配偶者のみの場合:配偶者がすべて相続
〇相続人が配偶者と子の場合:配偶者 1/2 子1/2
〇相続人が配偶者と父母の場合:配偶者 2/3 父母 1/3
〇相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4

次に、法定相続分で按分したそれぞれの相続税額に速算表を適用させ、各人の相続税額を算出します。

■この速算表を活用した計算が「相続税」におけるミスのもと?!

<相続税の速算表>
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超  55% 7,200万円

最後に速算表で得られた各人の相続税額を合算し、相続税額の総額を算出します。

■「相続税」の総額を実際の相続分で按分し、各種税額控除を行う!

上記で算出した相続税の総額を、実際の相続分で按分します。按分後、各人の相続税額に配偶者の税額軽減、障害者控除、未成年者控除等の各種控除を適用して、相続税額を算出していただく必要があります。

〇配偶者の税額軽減
取得した正味の遺産額が「1億6千万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは配偶者に相続税がかからない制度

〇障害者控除
相続人が85歳未満の障害者である場合、相続税から一定の額を控除する制度

〇未成年者控除
相続人が未成年者(2022年4月1日以降の相続又は遺贈については18歳未満)の場合、相続税から一定の額を控除する制度

※被相続人の遺言がなければ相続人が話し合って遺産の分け方を決めるのが一般的です。被相続人が亡くなるまで介護をしていた親族に多く遺産を渡すというケースもあります。つまり、相続人全員が合意すれば、法定相続分通りに分けなくても構いません。特例の活用や遺産の分け方を工夫することで相続人それぞれの税負担を軽減することが可能です。

■また「相続税」計算のミスが発生する可能性のある「2割加算」について

相続税計算で注意すべき制度に、「相続税の2割加算」があります。

この制度は、相続によって財産を得た人が、被相続人の1親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含む)または配偶者以外の人である場合に適用されます。例えば、被相続人の甥が相続人となり、算出した相続税額が100万円だった場合、相続税額の2割加算により、相続税額は120万円となります。

その他、実家を相続すれば、土地の評価額を80%減らせる「小規模宅地等の特例」の対象になります。例えば1億2000万円だった評価額は2400万円に下げることができるなどの特例となります。

いずれにせよ、「相続税」の計算は複雑であり、専門家に相談する事をお勧めします。

今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

 

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